トキナー AT-X 124 PRO DX インスピレーション
(2008.01.08最終更新)

 

レンズメーカーの雄、トキナー初のデジタル一眼レフ(APS-Cサイズ)専用レンズ、「AT-X 124 PRO DX」の使用レポートです。
トキナーはかつてはタムロン・シグマと肩をならべるレンズメーカー。同社の愛好者も少なくなく、カメラ愛好家には知れた存在でした。
ところがデジタル化の潮流に乗り遅れ。デジタル一眼レフを意識した新製品の投入が遅れ、両者の後塵を喫していました。
長き沈黙を打破し、久々に投入する自信作。その描画力は期待を裏切らない確かなものでした。

トキナー AT-X 124 PRO DX

いい加減な写真で恐縮ですが、20Dに装着した姿。
重量は570gとAPS-Cサイズにしては重いですが、20Dとのボディバランスは良好。





トキナー AT-X 124 PRO DX

こちらが拡大版、トキナーらしく堅牢な作り(に見えたが・・・)、距離計も本格派。
しかし、レンズの取り付け指標が小さく、本体への装着に戸惑う事も。
AF/MFの切り替えは、ピントリングを前後に動かすタイプ。ピントリングの操作性は良好だが、うまく切り替わらない場合もある。





トキナー AT-X 124 PRO DX

遮光効果が極めて高い、大型の花形フードが付属。強度もあり、内面は植毛加工された本格的なもの。
但し、APS-Cのイメージサークルギリギリサイズにつき、しっかり固定しないとケラレが発生するので要注意。




− 全域でシャープな描画、デジタル一眼に相応しき描画性能 −

12-24mm(35mm換算19.2-38.4mm)の広大な画角をどう生かすか?、風景や室内撮影が想定されます。
取り敢えずは屋外に持ち出してみます。以下は川越線沿線、川越市郊外の入間川河川敷にて撮影したものです。
弱い逆光下ですが、ゴースト・フレアは確認されません。広角レンズにつきものの偽色も最小限に抑制され、全域でフラットな画質を確保しています。
レンズサイズがAPS-Cに最適化されていますが、画角に無理が無く周辺部の歪み・光量低下も殆ど気にならないレベルです。

撮影サンプル

絞り優先AE(F10.0 1/500秒) 太陽光 ISO 100相当 JPEG Large Fine
若干暗めだが、発色は忠実な印象(画像をクリックすると実サイズで表示されます)。



下の写真はテレ端(24mm)での作例。背景のボケ方も自然で、最新ズームの実力が伺えます。
長き沈黙を保ったトキナーが満を持して投入した初のデジタル一眼レフ専用レンズ、その描画性能は十分に納得行くものです。

撮影サンプル

絞り優先AE(F4.5 1/500秒) 太陽光 ISO 100相当 JPEG Large Fine
中央部の解像力は高く、チューブと鉄板の質感も、忠実に再現されている
(画像をクリックすると実サイズで表示されます)。



− 単焦点に肉薄、もはやズームだけで満足? −

では、単焦点レンズとの実力差は?、焦点距離が近い例として、シグマの20mm F1.8 EX DG ASPHERICAL RFと比べてみます。
結論から述べれば、風景撮影ではトキナーが優位。最新設計が成せる技か、単焦点に肉薄する画質に成長しています。
もちろん、暗所撮影などではF値で優位な単焦点が勝る部分はありますが、スナップ用途が主体であれば描画力はほぼ同等、使い勝手も考慮すればトキナーに軍配が上がります。
下に両者の比較サンプルを紹介します。焦点距離はシグマと同一にするため、全て20mmで統一しています。

シグマとトキナーの比較

外観もそっくりな、シグマの単焦点(左)とトキナー AT-X 124 PRO DX(右)。
最新のデジタル一眼レフ専用レンズは、単焦点にどこまで迫れるか?



広角レンズ対決:被写体に近づいての撮影
(画像をクリックすると実サイズで表示されます)
トキナーAT-X 124
PRO DX
サンプル1
シグマ 20mm F1.8 EX DG
ASPHERICAL RF
サンプル2
絞り優先AE(F5.0),AWE ISO 100相当 JPEG Large Fine

中央部の解像力と偽色の少なさは、シグマに軍配。逆に周辺部の解像力では、トキナーが勝る。
トータルではシグマが勝るが、トキナーの描画力は単焦点に迫る。
但し、両者の最短撮影距離に差があり(シグマ:0.2m トキナー:0.3m)
主題を強調するような作品づくりであれば、シグマが適している。



広角レンズ対決:スナップ撮影
(画像をクリックすると実サイズで表示されます)
トキナーAT-X 124
PRO DX
サンプル1
シグマ 20mm F1.8 EX DG
ASPHERICAL RF
サンプル2
絞り優先AE(F8.0),AWE ISO 100相当 JPEG Large Fine

両者に優位な差は見出せないが、絞った場面ではトキナーの方が安定。
解像力ではわずかにシグマが上手だが、偽色や流れはトキナーの方が勝る。


今回は晴天下でのサンプルですが、トキナー AT-X 124 PRO DXの高い実力が垣間見えた感想です。
周辺まで隅々シャープで均一な画質、純正と比較すると画角とAF速度で若干劣るものの、十分な実用性能を備えています。
コストパフォーマンスも高く、お勧めの一本です。ただしサードパーティの宿命として、使用感は若干の慣れが必要。
AF/MFの切り替えは、前面のピントリングを前後に動かしますが、いささか硬いのが弱点。
ズームリングの感触はまずまずですが、回転方向が純正と逆なので、こちらも慣れが必要となります。
(裏返せば、ニコンユーザーのお勧め度は更にアップ。)

最後にF値を変化させてのサンプルです。デジタル一眼レフは絞り過ぎると回析現象が発生しやすくなり、CMOSに付着した汚れが顕著となるため、適度な値で留めるべき。
実際の感触ではF12.0前後が最もシャープ。これ以上絞るとCMOSに付着した汚れが目立つだけでなく、解像力の低下が著しくなるので避けるべきでしょう。

F値を変化させた時の画質の変化(左奥のトラックは実寸表示)
F4.0(開放)
撮影サンプル>
撮影サンプル
F5.6
撮影サンプル
撮影サンプル
F10.0
撮影サンプル
撮影サンプル
F14.0
撮影サンプル
撮影サンプル
F22.0(最大絞り)
撮影サンプル
撮影サンプル


− 描写力は満足だが、耐久性は要改善 −

ここからはしばらく使い込んでの後日談。購入後1年少々経過したある日、予期せぬトラブルが発生。
どうもAFの精度が悪い。何度もフォーカスを決め直すが、ピンずれは悪化の一途を辿る。
一体どうした事なのか?疑問に包まれつつマウントに触れると・・・、マウントを固定するねじが緩んでいるではないか!

マウントずれ

マウントずれ

正体不明のピンずれに頭を抱えていたら、その犯人は・・・
マウント部のねじが緩んでしまい、レンズが不安定な状態であった。



まさかの犯人に不覚を取られた気分。今まで数社の20本近いレンズを使ったが、購入後1年でマウントのねじが緩む製品は始めて遭遇(と言うより、今までそんな製品に遭遇したことが無い)。
しばらくはねじを締め直して使用を継続するも、悲劇はこれで終わらない。知らぬ間に本体のねじが続々と外れしまい、ついには鏡筒に緩みが発生、挙句の果てには絞り羽根が動かなくなってしまった。



頑丈であるべきのマウント部の緩みは、まさに「想定外」の一言。
その後もぼろぼろとねじが外れ・・・て、気がつかずに使い続けた私も悪いが。



止む無く修理依頼へ、ケンコー本社がある西新宿へレンズを持参(宅配便による修理受付も可能)。都営大江戸線の落合南長崎駅から徒歩5分ほどの本社ビルは、カーブの内側にあるので通り過ごしそう。
総合受付から修理窓口を聞き出し、2階の営業所へ向かう。ビル内にはこじんまりとしたショールームも存在したが、客は誰もおらず活気の乏しさが気になった。

雑感はともかく、2階の受付へ到着。誰もいなかったのでブザーを鳴らすと、奥から中年の女性が登場。
症状を説明し、レンズを引き渡し修理品預り証を受け取る。修理代の見積が終わったら連絡をくれるとの話であったが、その電話が1週間後とはいささか遅い。
修理自体は見積提示後、配送を含めて1週間強で終了。全体の時間は2週間半とまぁまぁなレベルでしょうが、キヤノンの場合は半分程度の所要時間ですむ場合もあるし、レスポンス向上は期待したいところ。
いや、その前にもっと耐久性をアップしないと困る。レンズはラフに扱うものですし。

交換したパーツ

修理代金は、故障したパーツ交換&レンズ清掃&点検・調整&配送代で、しめて15,750円也。
戻ってきたレンズの箱を開いたら、取り外したパーツが同胞されていた。




テープで固定

修理後は快調そのもの、逆光性能を除けば納得の写り。
ただ、ねじが外れるのは避けたいので、養生テープでねじ穴を塞いでの使用中。
マウントのねじは適宜締め直し、どうも不安が残るので



− 結局は壊れて再起不能となりました −

無事に修理を終えた「AT-X 124 PRO DX」。ピントリングの引っ掛かりが微妙に気になるも、その後も撮影に活躍。
だが、本当の悲劇はここからであった。修理後半年以上経過したある日、マウントの緩みが再発してしまう。
その後も状況はひどくなる一方。緩みは全体に波及し、遂には鏡筒が分解、挙句完全に壊れてしまいました。

サッカーの応援中に揺らすなど、使用方法が荒っぽいのは否めない。それでもたった2年半で壊れてしまうとは、ある程度の頑丈さが要求されるカメラ機材としては理不尽過ぎる。
この程度の耐久性では、トキナーのレンズは買えませんなぁ。

金属枠が外れた

せっかく修理したものの、その後も様々なトラブルに悩まされる
試合中のゴタゴタでフードを紛失(これは当方のミスだが)
カシマスタジアムでは応援中に異音が発生、気がつけば前面の金属枠が外れるハプニング




壊れました

ねじ止めしてマウントは固定されたかに思えたが、今度はマウントが鏡筒から外れてしまった
イラン遠征等も迫り修理の時間も無かったので、だましだまし使い続けていたら・・・





壊れました

鏡筒が緩んでしまい、最後は完全に真っ二つ、内部配線も断線してしまった
こうなると完全にお手上げ、修理代も高くつきそうなので、復活はあきらめた
わずか2年半の生涯を終え、天国へ召されてしまいました
後釜は純正品が高くて買えなかったので、 タムロン SP AF11-18mm F/4.5-5.6 Di II LD
Aspherical [IF] (Model A13)を購入(レポートは後日作成予定)






− 実写サンプル −

画像をクリックすると実サイズで表示されます


サンプル
2005.02.27 味の素スタジアム Canon EOS 20D
JPEG Large Fine,絞り優先AE(F9.0,1/320秒),太陽光,ISO 100
若干青みがかかるも、澄み渡る空が美しい。
隅々まで解像力高く、デジタル一眼レフ時代にふさわしき描画力。



サンプル
2005.06.11 等々力陸上競技場 Canon EOS 20D
JPEG Large Fine,絞り優先AE(F7.1,1/50秒),AWE,ISO 200
雨上がりの空に輝く2本の虹。ワイド端での撮影だが、大きな破綻は無い。
ただし、照明のフレアはやや大目。右側には軽度のフレアが発生しており、
逆光にはさほど強くないが、超広角レンズなので止むを得ない範疇。
フレアの形が角ばっており、円形絞りで無いのは惜しまれる。



サンプル

2005.05.29 御殿場市内 Canon EOS Kiss Digital
JPEG Large Fine,絞り優先AE(F9.0,1/1000秒),AWE,ISO 100,露出補正-1/3
ズームレンズとは信じがたい解像力。ややアンダー気味だが、色の再現性はここでも高い。
電線から木肌まで、忠実に写しだされている。



サンプル

2005.02.27 HUB川崎店 Canon EOS 20D
JPEG Large Fine,絞り優先AE(F4.0,1/25秒),AWE,ISO 800
開放F値が4.0なので暗所向けでは無いが、手ブレさえ注意すればそこそこ写る。
キヤノンのデジタル一眼レフは高感度でもノイズが低いため、
雰囲気を重視した、ストロボ不要の作品作りも自由度が高い。




サンプル
2007.05.23 タイ・バンコク Canon EOS 30D
JPEG Normal,絞り優先AE(F7.1,1/400秒),太陽光,ISO 100,露出補正+2/3
タイ・バンコクの王宮広場にて、ワイド端での撮影。金色の建物で露出が乱れるので、+方向に補正。
背後に建物が近接、スペース的に厳しい状況だが、両端の塔もほぼ全体を入れ切った。
周辺部の歪みは発生するが、解像感は良好。これだけ撮れればフルサイズへの固執感も乏しい。



サンプル
2007.05.23 タイ・バンコク Canon EOS 30D
JPEG Normal,絞り優先AE(F7.1,1/400秒),太陽光,ISO 100,露出補正+2/3
こちらもタイ・バンコクの王宮広場。ワイド端にすれば巨大建築物も余裕で収まる。
広角スナップ派でも十分満足の描画と思える。



サンプル
2007.05.22 タイ・バンコク Canon EOS 30D
JPEG Normal,絞り優先AE(F5.6,1/100秒),AWB,ISO 500
バンコクの夕暮れは交通ラッシュ、車がびっちりと道路を覆う。
F5.6であるが、描画は全域で安定。看板や車のナンバーも鮮明に読み取れる。



サンプル
2007.05.22 タイ・バンコク Canon EOS 30D
JPEG Normal,絞り優先AE(F4.5,1/30秒),AWB,ISO 1250
午後10時近くになれど、バンコクの夜は静まるどころか、なおもダイナミズムを保ち続ける。
シャッタースピードが低いので被写体ぶれは避けられぬが、手ぶれさえ注意すれば問題は少ない。
ノイズも最小限に抑制され、現地の空気がリアルに彷彿。高感度に強いEOS Digitalの特権である。




サンプル
2007.05.20 大分市郊外 Canon EOS Kiss Digital
RAW,絞り優先AE(F6.3,1/320秒),太陽光,ISO 100,露出補正-2/3
幾分ピントが甘い一枚であるが、可憐に咲き誇る花びらのピンク色を鮮やかに描画。
サクラソウの一種にも見えるが、何の花かはさっぱり不明。




サンプル
2005.08.23 東京都瑞穂町 Canon EOS 20D
JPEG Large File,絞り優先AE(F5.0,1/50秒),AWB,ISO 200
壁面をゆっくりと進むかたつむり、最短撮影距離は0.3mなので、強調感を生かした撮影も可。
描画性能は申し分無い。若干暖色系の色合いが、かたつむりの色と見事にマッチング。



サンプル
2007.05.20 大分郊外 Canon EOS 30D
RAW,マニュアル(F7.1,1/640秒),太陽光,ISO 160
鉄道撮影に広角系レンズの組み合わせは難しい。周囲の風景も織り交ぜるため、撮影者のセンスが否応に無く問われてしまう・・・。
けれどもサンプルは一般的な走行写真。熊本方面へ力走する、九州横断特急をとらえた。
AI Servoの追随性能は不得手な部類、この部分は非USM搭載レンズの宿命ともいえるので、
通過地点で置きピンをし、モータの動作を最小限にとどめるなどの工夫が必要。



サンプル
2007.04.09 呉駅付近 Canon EOS 30D
RAW,マニュアル(F7.1,1/640秒),太陽光,ISO 200
鉄道写真をもう一枚。呉駅の手前の鉄橋を渡る103系。
30Dを購入直後の撮影だが、全体的に破綻もきたさず、満足な描画を得られた。




サンプル
2007.07.15 国立競技場 Canon EOS 10D
JPEG Normal,絞り優先AE(F5.0,1/320秒),AWB,ISO 3200,露出補正-1/3
失敗事例を一枚、フードがいつしかずれてしまい、写真の右上と左下にケラれが発生。
付属のフードは緩みやすいのが難点、夜間撮影時は暗いため、発見が遅れる場合もある。
・・・と問題のフードはこの試合の最中に紛失、面倒くさいので現在はフードは未装着。




サンプル
2007.09.19 イラン・イスファハン Canon EOS 30D
JPEG Normal,絞り優先AE(F8.0,1/500秒),AWB,ISO 100
ACL遠征時に撮影した、世界遺産のイマーム広場。
さすがに一枚で全景をとらえるのは不可能だが、広大さは十分に伝わると思う。
この頃には鏡筒の”ずれ”が深刻化しており、撮影時にはレンズを両手で抱え込む必要があった。




サンプル
2007.09.19 イラン・イスファハン Canon EOS 30D
JPEG Large Fine,絞り優先AE(F7.1,1/125秒),AWB,ISO 160
イマーム広場の一角にあるモスクの入口、建物の全景もほとんど構図に収まる。
並みのレンズやコンデジではマネは不可能、まさに超広角レンズの面目躍如。




サンプル
2007.09.19 イラン・イスファハン Canon EOS 30D
JPEG Large Fine,絞り優先AE(F5.0,1/40秒),AWB,ISO 800,露出補正-1
こちらはモスクの内部、暗所での高感度撮影であるが、天井の装飾も見事に描写している。




サンプル
2007.09.19 イラン・イスファハン Canon EOS 10D
JPEG Normal,絞り優先AE(F5.0,1/30秒),AWB,ISO 3200
イスファハンのスタジアムにて。遠路駆けつけた勇敢なサポーターが、寄せ書き入りのビッグフラッグを盛大に揺らす。
過酷なイラン遠征の記念すべき一枚。生涯の思い出を確実に残せたと思う。




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