キヤノン EF 400mm F4 DO IS USM
インスピレーション
(2015.02.11最終更新)

 

このページでは、キヤノンの超望遠単焦点レンズ「EF 400mm F4 DO IS USM」の使用レポートを紹介します。
EF 400mm F4 DO IS USMは2001年末に登場。一般的なLレンズとは異なり「積層型回折光学素子(DOレンズ)」と称されるキヤノン独自の光学レンズを採用。登場当時は技術的にも着目を浴びた存在です。
積層型回折光学素子の詳細は、光学知識ゼロの私には難解です。技術的な情報はこちらのページが参考になります。

EF 400mm F4 DO IS USMの特徴について、キヤノン曰く「DOレンズを採用する事により、従来の屈折光学素子のみで設計した同スペックのレンズと比べ、同等の高画質を維持しながらも全長で約26%減、質量で約36%減の小型軽量化を実現。」とあります。
簡潔にまとめるならば、「高画質をキープしながら、小型軽量化を果たしたレンズ」。その一方で、積層型回折光学素子の特性(弱点?)として、暗い場所に極めて明るい光源が存在すると、稀に光源を中心としたリング像が発生するケースもあり、使いこなしが難しい一面も併せ持ちます。

・・・と、細かい話はこの程度。筆者もスポーツ撮影を趣味とするひとりとして、この種の超望遠レンズを保有するのが長年の夢でした。
非常に高価なためずっと購入を躊躇していましたが、我慢の限界に達したので購入を決意。
さすがに新品は厳しいので、2006年8月にABランクの中古品を43万円強(高い!)でゲット。
大きな出費となりましたが、これでも新品と比べると実売で10万円以上は安価でしたが・・・。


写真

相変わらずな畳の上で恐縮ですが、EF 400mm F4 DO IS USM一式(専用ケースは除く)。
専用フードとキャップは、EF300mm F2.8L IS USMと共通のタイプ。
ちなみに製造年月を調べたら、どうやら2001年12月と初期のタイプらしい。
専用フードは手回しネジで固定するタイプですが、入手後程なくネジが外れてしまい
結局は養生テープで固定するはめに。





写真

ここでサイズの比較、DOレンズは本当にコンパクトなのか?EF 300mm F4L IS USMと並べます。
全体のボリュームはともかく、全長がほぼ同じなのは凄い。





写真

30Dに装着させた姿。400mmのレンズとしては小振りだが、客観的にはかなりデカい。
コンパクトデジカメと比べると、その差は歴然。







左側面に各種スイッチが並ぶ。表示も適切で操作しやすい。
AFストップのスイッチ(左側の黒いボタン)は装備されるが、
AF位置を記憶するフォーカスプリセット機能が無いのは何故だろう?
このあたり、DOレンズは本格プロユースとの認識とは異なるのか。防塵・防滴構造についてはしっかりと対応。
スイッチの右隣にストラップ取付金具があるが、軽量設計故か必要性は感じない。
(後日談:「必要性は感じない」と書きましたが、ストラップは装着必須。何故ならば・・・・(理由は後述)。


購入の対象としては、最後までEF300mm F2.8L IS USM(テレコン併用)と悩み続けました。スポーツ撮影の本道としては、素直にサンニッパを選ぶのが正解でしょう。
けれどもサンニッパでは、観客席からの撮影では焦点距離が物足りないのも事実。そこでテレコン併用となりますが、AF速度と精度の低下はどうしても避けられません。
悩み続けた挙句、DOレンズ採用による軽量設計も含め、結果的にEF 400mm F4 DO IS USMを選択しました。
プロならばやはりLレンズなのでしょうが、アマチュアの私にはこれで十分(十分過ぎるか)。遠征は徒歩での移動がもっぱらなので、少しでも軽いほうが負荷も軽減、との判断も動きました。
・・・と書きつつも、結局は重量級のレンズを揃えることに(おいっ・・・)。


写真

収納時はコンパクトにまとまるので、小さめのカメラバックにも収納可能。
ちなみに本体重量は1,940g。一例としてEF300mm F2.8L IS USMと比べると、600gも軽量。
長時間の移動には、この重量差がじわじわと効いてくる。




− 各種比較サンプル −

細かい使用感は随所で語るとして、ここで色々な撮影条件によるサンプルを紹介します。
各画像をクリックすると、実サイズで表示されます。DOレンズの特性もご覧頂ければと存じます。


DOレンズの特性テスト1(リング像の発生チェック)
テストケース1(30Dで撮影)
写真
F6.3,1/640,AWB,ISO 640
テストケース2(30Dで撮影)
写真
F5.0,1/640,太陽光,ISO 400
DOレンズ搭載製品の注意点として挙げられるとおり、明暗差が強い光源下では、DOレンズ独特のリング状の像が確認される。
キヤノンの注意点にあると通り、水銀灯での発生頻度は明らかに高い。
その他の光源でも不定期で発生。これを独特の味とするか、徹底的に嫌うかは判断が分かれるところ。




DOレンズの特性テスト2(背景ボケのチェック)
キヤノン
EF 400mm F4 DO IS USM
(30Dで撮影)
写真
F7.1,1/800,太陽光,ISO 125
キヤノン
EF 300mm F4L IS USM
(20Dで撮影)
写真
F7.1,1/800,太陽光,ISO 200
「DOレンズは背景ががさつく」と言われるが、Lレンズと比較するとどうか?
結果はご覧の通りで、機種やセッティングの違いを考慮しても、EF 400mm F4 DO IS USMの方ざわついた印象。
ポートレート派など背景ボケ重視の人には、DOレンズは拒否反応が強いと思われる。
個人的には被写体も被写体なので、全く気にしませんが・・・。




逆光性能 デジタル対応レンズとの比較
キヤノン
EF 400mm
F4 DO IS USM
(30Dで撮影)
写真
F8.0,1/8000,太陽光,ISO 800
キヤノン
EF28-300mm
F3.5-5.6L IS USM
(30Dで撮影)
写真
F9.0,1/1250,太陽光ISO 200
カメラのセッティングが全く異なるのはともかくとして(いい加減だが)、逆光性能に関してはデジタル一眼レフ時代に登場したレンズには明らかに及ばない。
EF 400mm F4 DO IS USMの逆光性能ですが、豪快なフレアが発生するEF 300mm F4L IS USMよりは多少マシかなぁ・・・のレベル。
多レンズ構成とは言えども、高価なレンズだけに改善が望まれる。もっとも最近製造されたものはデジタル一眼レフの使用を考慮し、逆光性能が改善されたとの噂もあるが、真偽は不明。




IS(手ぶれ補正機能)のON/OFF比較
IS ON(30Dで撮影)
写真
F5.6,1/2000,太陽光,ISO 100
IS OFF(30Dで撮影)
写真
F5.6,1/1600,太陽光,ISO 100
手持ち撮影でのテスト。両者の撮影条件が若干異なるが、こちらもご愛嬌。
ISユニットが旧型で、補正効果はシャッター速度換算で約2段分と控えめ。
しかしながら、ISの効果は明確に確認。高速シャッターの場合でも構えがラフな場合は、ISの威力を発揮。
IS ONによるレスポンス低下も極小。EF 400mm F4 DO IS USMには三脚検知機能も装備しているので、ISは常にONで構わないと思う。


− 各種実写サンプル −

最後に色々なサンプル画像を紹介します。各画像をクリックすると、実サイズで表示されます。
DOレンズは巷の評価はいまひとつですが、個人的には軽量・コンパクトなメリットも含め、既に手放せない存在です。
もっとも余りに高価なのは最大の問題点。無理な注文は承知の上で、低価格化を図って欲しいのも本心です。

なお、ISは常にONの状態で撮影しています。


写真
2006.09.03 等々力陸上競技場 Canon EOS 30D
絞り優先AE(F4.0,1/800秒),AWB,ISO 1600,JPEG Normal

この手の超望遠レンズの用途として、第一にスポーツ撮影が思い浮かぶ。
APS-C機では640mm相当の望遠となり(単なる「トリミング」との異論もあるが)、観客席からでも容易に撮影をこなす。
AFも俊敏なので、狙った被写体は確実に撮影可能。ただ被写界深度(ピントが合う範囲)は何だかんだで浅めなので、
一瞬でも油断するようでは、ピンボケ写真を量産する結果にもなる。





写真
2006.11.18 等々力緑地 Canon EOS 30D
絞り優先AE(F5.0,1/500秒,露出補正-1/3),太陽光,ISO 200,JPEG Large Fine

超望遠レンズの代表的用途の鳥さん撮影。手持ち撮影を試みたが、ISの効果かなかなかシャープ。
背景ボケはDOレンズの宿命ゆえか、やや固め。これを嫌ってDOからLに乗り換えた人もいるようだ。
とは言えども、山奥に機材を抱えて撮影するようなシチュエーションでは、DOレンズの軽量さが疲労軽減となり、
結果的に撮影に集中しやすい・・・なシナリオも想定されるのでは?





写真

2006.11.18 等々力緑地 Canon EOS 30D
絞り優先AE(F5.6,1/320秒),太陽光,ISO 320,JPEG Large Fine

一脚撮影。Lレンズと比較するとシャープさは若干劣るが、望遠効果を生かした撮影も思いのまま。
作例はAFで撮影したが、手前の木の枝にピントが合従。当然だがピント合わせは相当シビア。
こんな場面はMFが正解(個体差で単に前ピンなのかも知れない)だろうが、APS-C機ではファインダーが劣るため調整が困難なのも事実。
蛍石採用の賜物か、発色はなかなか優れている。





写真

2006.09.23 大阪環状線 大正駅 Canon EOS 30D
マニュアル露出(F7.1,1/800秒),太陽光,ISO 125,RAW(DPP 2.2によるJPEG現像)

これほどの超望遠レンズになると、高速で向かってくる列車の撮影は、シビアな構図合わせが要求される。
この写真も微妙に傾いてしまった。それでもしっかりと決めれば、圧縮効果を生かし迫力のある走行シーンを入手できる。
鉄道ファンには超望遠単焦点レンズを使うケースは稀なようだが、この迫力を一度知るとやみつきになる。
DOレンズ独特のリング像だが、明るい日中ではほぼ発生しない。





写真
2006.11.07 川崎市内 Canon EOS 30D
マニュアル露出(F11,1/40秒),太陽光,ISO 100,RAW(DPP 2.2によるJPEG現像)

シグマのテレコンバータ(APO TELE CONVERTER1.4x EX)を併用。三脚にセットし月の撮影にチャレンジ。
DOレンズなので、天体撮影はリング像全開・・・と覚悟したが、撮影結果は予想を裏切る形に。
リング像は殆ど確認不能。天体撮影も案外イケそうなのは新鮮な発見。
一般論として、三脚撮影時ではISはOFFにするのが通例。ここではISはONの状態で撮影したが、特に弊害は感じなかった。





写真
2006.11.26 等々力陸上競技場 Canon EOS 30D
絞り優先AE(F4.0,1/160秒,露出補正-1/3),AWB,ISO 1600,JPEG Normal

2006年シーズンで引退をした、川崎フロンターレの今野選手の胴上げ写真。
かなりの遠い位置からの撮影となったが、ISが非搭載のレンズであったら、明らかにぶれまくっていたであろう。
劣悪な撮影条件下でも、ISにより救われた例のひとつである(被写体ぶれはさすがに防げないが)。





写真
2009.12.30 東海道新幹線小田原駅 Canon EOS 50D
マニュアル露出(F5.0,1/1000秒),太陽光,ISO 640,RAW(DPP 3.4によるJPEG現像)

高速で走り去る新幹線を手持ち撮影。50DのAIサーボAFでも追随できた。
ヘッドライドの周囲にうっすらとリングボケが確認されるが、全体の印象は悪くない。
比較的軽量なので長時間の手持ち撮影でも疲労は少なく、撮影への集中力も削がれない。





写真
2012.04.05 広島空港 Canon EOS 7D
絞り優先AE(F8.0,1/2500秒,露出補正+1/3),AWB,ISO 500,RAW(DPP 3.4によるJPEG現像)

超望遠レンズは旅客機の撮影にも大活躍。正確かつ俊敏なAFは、空港から飛び立つ瞬間も逃さない。
F8まで絞っても若干「もやっ」とした感じが残るあたりは、DOレンズの弱点と言えそう。
周辺減光についてはAPS-Cの機種では皆無。フルサイズの機種では・・・撮る機会が無かった。





写真
2013.07.06 等々力陸上競技場 Canon EOS 7D
絞り優先AE(F4.5,1/2500秒,露出補正-1/3),太陽光,ISO 250,RAW(DPP 3.4によるJPEG現像)

サッカーの試合にフォーミュラレディが来場!?早速ポートレイト撮影にチャレンジ。
晴天下の撮影では目立った問題は確認されず。適度な描画の柔らかさは人物撮影には向いているのかも知れない。
超望遠レンズだと構図を作るのは困難なので、ポートレイト用途であれば短めの焦点域のレンズが無難なのも事実。





写真
2013.07.06 等々力陸上競技場 Canon EOS 7D
絞り優先AE(F4.4,1/320秒,露出補正-1/3),AWB,ISO 1250,RAW(DPP 3.4によるJPEG現像)l

陸上競技場のトラックにフォーミュラーカーが激走!?等々力陸上競技場の川崎フロンターレの公式戦イベントの一幕。
超望遠レンズはモータースポーツでも活躍するが、このレンズは軽いので動体への追随は容易。
フォーミュラーカーはご覧のとおりバッチリ撮影。ただ、市販車ベースのレースではヘッドライト回りのリングボケ発生は避けられないかも。





写真
2014.12.21 JR武蔵野線新秋津駅 Canon EOS 7D Mark II
マニュアル露出(F4.5,1/500秒),AWB,ISO 1000,RAW(DPP 3.4によるJPEG現像)l

7D Mark IIで唯一の鉄道撮影となった中の一枚。強化されたAFユニットとの相性は抜群。
ただ、高画素化で描画の「アラ」が目立ってしまい、フィルムカメラ時代に設計されたこのレンズの限界を感じたのも事実。
最新鋭のデジタル対応レンズとの描画性能差があまりに大きく、2014年に入ると利用頻度は激減してしまいました。


− さらば EF 400mm F4 DO IS USM ・・・8年間ありがとう −

購入以後8年間喜怒哀楽を共にした「相棒」たるこのレンズ。しかしながら新設計のレンズが増えゆく中で、描画性能への見劣り感が徐々に強くなってきました。
大きな転機を迎えたのは、EF 500mm F4L IS II USMの入手。更なる望遠効果と描画性能の向上を目指し、2014年4月の消費税増税を前に清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入。
大きな出費を強いられるも、圧巻の描画性能に驚嘆。EF 500mm F4L IS II USMで撮影した写真とEF 400mm F4 DO IS USMで撮影した写真を比較すると、解像感を筆頭にあらゆる意味で前者が圧倒。
最新鋭の単焦点レンズと比較すると、描画性能に関すれば勝ち目は無い。EF 400mm F4 DO IS USMへの物足りなさが急増し、利用機会は激減してしまいました。

写真

2014年1月に投入の「EF 500mm F4L IS II USM」。
最新の光学技術をふんだんに投入した超弩級レンズ、
単体では悪くないEF 400mm F4 DO IS USMですが、これと比べるとさすがに歯がたたない。



EOS 7D Mark IIの導入もEF 400mm F4 DO IS USMへの劣等感を強めた要因。高画素化(1割程度ですが)に描画性能が追いつかず、画質への不満は一層強まってしまう羽目に。
そんな折、EF100-400mm F4.5-5.6L IS USMの後継製品となるEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMが登場。EF100-400mm F4.5-5.6L IS USMは亡くなった父から譲り受け(単に実家の防湿庫から拝借しただけですが)、利便性の良さを感じたレンズ。
残念ながら写りに満足が出来ず、当時は早々に手放してしまいましたが、16年ぶりの後継製品となるEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMが満を持しての登場。各所のレビュー結果を拝見すると解像力では最新鋭の単焦点レンズとも肉薄とのこと。
サッカーの試合に対応可能なズームレンズがどうしても欲しい。シグマの120-300mm F2.8 DG OS HSMも揃えましたが、300mmだと望遠側が物足りなく、テレコンを装着するとAFが遅くなってしまう。

という訳で、懲りずにEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの入手を決意。購入資金を確保するためにEF 400mm F4 DO IS USMを中古カメラ屋さんに売却し、8年間の蜜月生活にピリオドを打ちました。
長年ありがとうEF 400mm F4 DO IS USM。なお後継製品にEF400mm F4 DO IS II USMがありますが、実売価格が80万円を超えるのでさすがに手が届きません(苦笑)。

写真

8年間共に歩み続けたEF 400mm F4 DO IS USM。最大の出来事は写真の「パックリ事件」。
レンズ本体にストラップを装着せずに撮影していたところ、一瞬気を失い手元から滑らせてしまった。
気が付けば2メートル下の地面に落下。そしてご覧のとおり綺麗に分割。
壊した時は再起不能も覚悟しましたが、キヤノンの修理センターに持ち込み見事に復活。
それ以来長玉系のレンズにはストラップ装着を必須とし、同様の事故を回避しています。





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